友からの電話 -2020年5月8日
ゴールデンウィークのインストラクター講座を終え、来週の面接までは5日ほどあるので、木金は数日遅れの休暇をとることにした。休暇といっても、もう引き継ぎは済んでおり、会社は求職活動に専念してよいという有休扱いになっている。前にも書いたように求職活動は、毎日ルーティンがあるわけでもなく自分の気持ちを切らないように日々何かの勉強やスキルアップをしていた1ヶ月だった。
そんな自分に少しだけ休みをあげることにした。
なんてことはないんだが、見ようと思っていた映画をみたり、漫画をよんだり、音楽をきたり、何時だからどうするということを考えない二日間にした。
金曜日の夕方、以前勤めていた会社の友人から突然電話がかかってきた。彼とはもう2年もあっていなかったが、とても気が会うやつで社会人になってからできた親友の一人だ。
彼のことを親友だと思えるようになってのは、前の会社を辞めた最終日の出来事だった。自分のキャリアアップのための転職のためにその会社を辞めたのだが、惜しんでくれる人がいる一方で、自分をよく思っていない人たちもいたことがわかっていたので送別会の類は遠慮した、それでも部下をはじめ、親しい人たちがこじんまりと送別会を開いてくれた。彼はその中にいた。彼とは仕事上、いろいろやりとりをしたが、一度も意見対立することなく、いつも同じ方向を向いて仕事をしてきた。趣味もゴルフと音楽という共通点があったので、話していて心地よかったがそれ以上の親しさを感じていなかった。
送別会では彼と近い席に座っていて3時間ちかく、いつものノリで話をしていた。11時頃になってお開きとなったのだが、彼が
「今日は俺のいつもの店に連れて行く。付き合え。」
といってきたので二人でもうしばらく飲むことにした。
彼が連れていってくれたのはいわいるおっさん的なスナックだった。
ウイスキーの水割りを飲みながら、とりとめのない馬鹿話をしたり、カラオケで歌ったり、そんな時間が過ぎていった。彼もだいぶ酔っ払っていて、ろれつもうまくまわらなくなった頃、ふと呟いた。
「なんでお前みたいなヤツをうちの会社は辞めさせるんだよ。なにがなんでも引き止めなきゃ駄目だろう。そんな会社は駄目だ。」
心に染み渡る言葉だった。
そして彼はタクシーでうちまで送ってくれた。もちろん自腹で。
そんなやりとりがあってから彼のことは心の中で親友だと思ってきた。そして、たまに飲みにいったり、ゴルフにいったりしてきた。ただここ数年は彼がコンサルティング部門のトップになったこともあり、お互い忙しくなり疎遠になっていた。
そんな彼からの電話だった。
「うちの企画部門のトップが先月会社を辞めたんだが、おまえ戻る気ないか?」
僕は彼に退職勧奨を受けたこと、求職活動をしていること、いくつかの会社に落ちたこと、来週、最終面接をうける会社があること、すべてを立て続けに話した。
「わかった。今から社長と人事部長にお前を推薦しにいってくる。面接はそのまま受けろ、こっちも何も保証できるわけじゃないから。来週 もう一回連絡する。いいな。」
僕には「ありがとう」しかいえなかった。
電話を切った後、涙が込み上げてきた。
しかし、このタイミングでこの電話とは。。。
世の中まだまだ捨てたもんじゃない。絶望する必要なんてない。